どうでも良くなった。
何がそこまで
私をそうさせたのか…。
今考えてみても
分らない。
あの日私は
全てを捨てた。
大切にしてきた鞄も
買ったばかりの服も
住み慣れた部屋も
可愛いがっていた犬も
やっと任された仕事も
そして
私を支えてくれた人も
「何かが切れた」
良く聞く言葉だけど
私にもその音は聞えた。
突然に前触れもなく。
プツリと言うよりは
ブツッッとけたたましい音。
その瞬間、全ての事がくだらなくてちっぽけで、もうどうでも良くなっていた。
大粒の涙が落ちている事も気付かないで、私はゴミ袋に色んな物を突込んだ。
ヒステリックな姿に怯える犬は、キャンキャンと私の後ろで鳴く。その声にすら嫌気がさして、私は部屋中の物をひたすらゴミ袋に詰め込んだ。
付き合って8年。
あまりにも長い時間は、私達の関係を馴合いだけのつまらない物にしてしまった。
出会った頃の様なドキドキとときめく様な事はこれっぽっちもない。
それでも、互いにここまでやってこれたのは、居心地がいいからだった。何かに気を使う事も、遠慮したり嫉妬したりの面倒な事もしなくていい。それは互いを良く理解していて信頼があるから。
でもそんな生活は、刺激がなさ過ぎて男と女だと言う事を忘れさせた。
たまに会う友達と世間の同世代の子達と自分を比べた時、とてつもない劣等感が襲ってくる。
「私は女なのに…」
「私は今幸せなのだろうか」
そして何だか悲しくて悔しくて、自分に言い聞かせる。
「私はきっと幸せなんだろう。これからきっともっと幸せになるんだ。」
言い聞かせれば、言い聞かせる程に虚しさが心を支配していく。