私達の関係を友達は羨ましいがった。
「いいなぁ。私何てすぐ終わっちゃうから…。結婚はいつするの?」
ノウテンキに紅茶を啜る彼女が私は羨ましい。
入口の開いた籠の中の鳥。
私はこの生活での自分をそう例えている。
別に結婚している訳ではないから、嫌になればすぐに終らせる事も出来る。
空を自由に飛ぶ彼女の様に、私だって入口は開いているのだから、飛出していく事が出来るのだ。
なのに、それをしないのは知っているからだ。野生の鳥とは違い、飼い慣らされた鳥は知っている。此所にいれば辛い事をしなくても餌が貰えて、鷹や鳶にも襲われる事のない安全な場所だと…。
そして、いつしか飛び方を忘れて外の世界に恐怖すら覚える。だから私は此所に居るしかない。安全な此所に…。
「結婚いつするの〜?」
友達の声にハッと我に返り、言葉を探す。
「ん〜そのうちね。」
実の所は、結婚何て考えられなかった。でもそんな深くて暗い私の考えは、陽気な昼時にはこのノウテンキな彼女の前では話す事ではない。
付き合い出して1年位の間は互いに良く誓い合った。
長いキスの後で、帰りの車の中で、彼の腕枕の上で。
「結婚しようね」
その時は、結婚はきらびやかで眩しくて綺麗で、とても素敵な事の様に思えていた。
やがて、キスもなくなり、帰りも別々で、寝る時はベットの端と端になる頃には、あの頃あんなに見えていた結婚の2文字がぼやけて見えなくなっていた。
そして私は、休みの朝彼のパンツを干している時に悟った。
結婚とは、妥協と我慢と平凡なのだと。
きっとこの人と結婚したって、今と変らない生活が後何十年先にもあって、結婚してしまえば私は本当の籠の中の鳥になってしまうんだ。
だから結婚何てしたくない。そう私は思いながら、ノウテンキな彼女の話しを聞いていた。