いつの間にか眠っていた様で、気が付くと朝だった。
会社には昨日付での退職届を出してあるし、仕事へ行く事もしなくていい。
私はとにかく全てから開放されたくて、リセットしたくて全ての事を捨てる覚悟でいた。
起き出して、必要な物だけを鞄に詰め込んで、部屋の物を整理する。大半は昨日ゴミ袋に詰め込んでしまった。
私の気配を感じて、ライがトコトコやって来る。クーンと鼻を鳴らしながら不思議そうに私を見つめる。何だか胸が痛んだ。頭を撫でて「ごめんね」と言うと、ライは全てを悟った様に部屋を出て行く。
リビングへ鞄を運ぶと、そこには仕事へ行かなくてはいけない時間なのに彼がいた。
何でいるのか聞こうか迷ったが、そのまま聞かずに鞄だけ置くと私はリビングを出た。
「あのさぁ」
後ろからうわずった声が追いかけて来て、私は振り返った。
「出掛けよう。」
彼が何をしたいのか理解出来なかった。今更になって二人で出掛けようなんて。
返事もしないで、私はベットの上に横になった。
今更引き止め様なんて遅過ぎる…。
「出掛けよう。お前もうすぐ誕生日なんだし。最後ぐらい盛大に祝ってやるから…。」
ぼんやりしている私のすぐ側で声が響き、私は驚いて起き上がる。
「何なの?今更…」
私はぶっきらぼうに言うと彼を見た。寝てないんだろう。目の下にクマが出来ていて顔色が悪い。
「引き止めたいからとかじゃなく、今更だけど今まで何もしてやれなかったし…」
覇気のない彼が不憫に思えて、私は彼と久しぶりに出掛けた。