程無くして、料理とワインが運ばれて来た。
彼とこうして食事するのも、これが最後かと思うと案外寂しく思えて来る。
涙が落ちない様に慌てて、気を紛らわす為のワインを飲む。彼も黙ってワインを飲む。
料理の味も分らない程、何だか気まずい空気の中で彼が何かをそっとテーブルの上に置いた。
「本当は誕生日の日に渡すはずだったんだ…」
私はゆっくり手を伸し、箱の中を確認して息を止めた。
小さいけど、キラキラ光るダイヤの指輪。
私が目をパチクリさせていると彼は笑いながら
「俺って格好悪いな。本当はベタにお前の誕生日にプロポーズするはずだったんだ。けどもう無理だから。お前にそれやるよ…。」
私は言葉が出なかった。
何にも考えてないと思っていた男から突然のサプライズ。
でもあまりにもタイミングが悪くて、ポロポロと涙が溢れてくる。堪えていた分だけ溢れて止まらない。
「本当バカ。タイミング悪いよ…」
私は泣きながら指輪を見た。涙で歪んで、ダイヤは余計にキラキラと輝いて見えた。
「だよな…」
彼は俯いてまた黙り込んだ。