次の日の朝、私は昨日買ってもらった白いコートを着た。
ライにお別れのキスをして、鞄を手に取ると玄関へ向う。
彼は後ろからトコトコとライみたいについて来た。
「じゃあ、今までありがとうね…。」
私がそう言ったと同時に、彼は私を引き寄せて抱き締めた。少し震えていた。
「此所に居ろよ。俺の側から離れるなよ。」
泣いてるのが分った。初めて見る涙だった。私は胸が痛くて知らぬ間に涙が溢れていた。
「お前が嫌な所は直すよ。俺はお前じゃなきゃ駄目なんだ…」
プライドも捨てて、子供の様に泣く彼を優しく撫でながら私は言った。
「ライをよろしくね」
そっと彼の手を解き、私はドアを開けた。
いつもより風は冷たく感じ、怖いぐらい空は高く、私は空に浮ぶくらい軽く何も無くなっていた。
空には鳥がのびのびと飛んでいる。