贈りもの-3-ミキヒロ

So-n  2008-12-12投稿
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幹弘(ミキヒロ)は、1Kのアパートのドアを開けた。
開けた隙間から冷たい風がヒュッと抜ける。思わず身震いしてしまう。

エレベーターのない2階建ての真新しいアパート。デザインは小綺麗で、女性も多く住んでいる。

2階に住む幹弘は、プラスチック製の階段の手すりに触れ、冬の寒さを実感する。階段は凍るほどではないが、革靴を履いていては滑りやすいかもしれない。
一段一段、確認しながら降りる。

白い息を吐きながら、コンビニで止まった。グレーの着なれたスーツから、潰れ気味のタバコを取り出す。ベビースモーカーではないが、やはりなければ息苦しい。
腕時計で時間を確認しながら煙をはく。1本吸い終わると、足早に駅へ向かった。
定期を通しホームのいつもの場所に立つ。
ここからの景色が好きだ。反対ホームの後ろに生い茂る木々、その隙間を埋めるように顔を出す花。
どれも綺麗にされているわけではないし、雑草もある。でも幹弘には妙に調和されているように見えた。
それには1つ、理由があるのか。
その景色の前に決まって立つ女性。今日は白いコートを着ている。
いつからか反対ホームに現れた。彼女が毎日そこに立つから、幹弘も今の場所に毎日立つ。
回りの人々がポケットに手をしまったり、亀のように首を肩にしまっているとき、彼女はピンと背筋を伸ばし、綺麗に立っている。まるで寒くないように見えるのだ。
そんな彼女が、彼女の後ろの景色を見事にしているのだろう。

だが、反対ホーム。決して交わらない。



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