午前5時、外は雪。私は冬が嫌い。
何でかって?
寒いから。
照明、ストーブ、テレビの順番にスイッチを入れ、コップに牛乳を注ぎレンジで温める。私はホットミルクが大好きだ。何でかって?
好きだから。
ホットミルクを片手にストーブの前に座り、早く点け早く点けと私は唱える。足が冷たいんだよ足が…。
テレビではこんな時間からお天気お姉さんが笑顔で天気を伝えてくれる。『今日は一日厳しい寒さになるでしょう。雪道を歩く際には足元に十分注意してください』
『ありがとうお姉さん、お姉さんも気を付けなよ』と私は呟く。
いつもより早く起きたからゆっくりと支度が出来る…わけはない。結局時間ギリギリまでのんびりして、慌てて部屋を出る私。靴棚からお気に入りのパンプスを出す。冬なんだからブーツを履けばいいじゃないのって?
私はこのパンプスがいいんです。
いってらっしゃい、と私は笑顔で家を出る。
『美咲先輩おはようございます…って寒くないんですか!?パンプスで』と後輩のかよちゃんが言う。
『え?寒いよ?あ、でもほら、私まだ若いし』と私。
『あ、あ〜、ですよね〜』とかよちゃん。
んなわけあるか!!私は今年で28だ。寒いのにわざわざパンプスを履くのには何か信念があるのって?いや、ない。
そんなにお気に入りなのかって?
ん〜そうでもない。
何度も修理に出してるけど、良く見ると少しずつボロボロになっている。
新しいのを買えばいいじゃないかって?他にも何足かある。でもこれがいい。
そんなの変じゃないかって?
うん、そう思う。
何でそんなになるまで、しかも冬なのに履くのかって?
そんなのわからない。嘘、ちゃんとわかってる。
オシャレは足元からって言うけど、秘密は足元からって私は勝手に思ってる。
だからこれがいいの。
『先輩会社遅れますよ〜』とかよちゃんが急かす。
『ごめんごめん』と私。
『かよちゃん、秘密は足元からって言葉知ってる?』
『何ですかそれ?』とかよちゃん。
『知らないならいいや。さっ急ご急ご!遅れちゃう』
『え〜、気になるじゃないですか〜教えてくださいよ〜』とかよちゃんが少しふてくされながら言っている。
何でパンプスこだわるのかって?
それは…秘密。