「シーラが母さんを殺した、そうなんだろ?」
違うと、言って欲しい。
これが勘違いだったと言うならどんなに心救われるだろう。
「……。」
シーラは、何も言わない。ただ唇を固く結び泣き出しそうな顔をしている。
「…否定、しないのか?」
勝手に声が震えてしまう。「私が彼女を死に至らせてしまった。
私が彼女を殺してしまったのと同じよ。」
違うと、言ってくれ。
誰か、シーラじゃないと、言ってくれ。
しかしシーラは、自ら罪を告白し、認めている。
「嘘だって、言ってくれ…」吐き出すように言った。
「…嘘じゃ、ないわ。」
ぬくもりの灯が、消されてしまった。
それを嘆くかのように、薄暗い雲から水滴が落ちてきた。
やがて激しい雨になり、二人は向かいあったままだ。「ごめんなさい。」
シーラは小さな声で謝り、雨の向こうに消えた。
雨に体を浸すようにゆっくりと歩いた。
びしょ濡れのランスォールをラウフと雪は驚いた表情で迎えた。
「おいランス。
シーラと何があった?
あいつも濡れて帰ったかと思えば空き部屋にとじ込もってるんだ。」
「シーラさん、かなり憔悴していて…」
二人の問いかけに答える気にはなれず、ランスォールただ黙って濡れた髪を乾かした。