はるか遠く・・・どこかの星空の下・・・草も生えない荒野で・・少年は・・・歌を歌ったその歌は・・少年にしかわからない・・
生まれた頃から・・ずっと頭にあった・・歌・・まだ見ぬ誰かのために・・・ずっとあった・・ラブソング
少年は歌う・・目の前にある・・幾千の星に向かって・・
少年の名は・・ダナ=クライシス・・覚えていてほしい・・
彼が彼であった時の名前を・・・幼い泣き虫の・・ダナ=クライシス・・
「おい」
不意に少年の背後から声がする
「もう、時間なんですか?」ダナは弱々しく丁寧な口調で答えた
「ああ、もうすぐここにも・・灰色の雨がくる・・ぼやぼやしてると・・お前まで死ぬぞ・・」声は脅している様だった・・聞いていないのか・・少年は向き変えて・・(すぅー)星を見上げ両手を広げて・・思いっきり空気を吸う
「何しているダナ!!」声の主は怒鳴りながら無理やりダナの肩を掴む
「アンサー・・」ダナの声は弱々しかったが・・不思議なほど落ち着いた口調だった・・
「お前・・ここはまだ安全地帯だが・・いつ風の流れに乗って・・死の灰がお前の口に入るかわからないんだぞ!そうなったらお前は死ぬ!こっちの苦労はすべて水の泡だ!大体お前は・・」
「信じられないんだ・・」
あまりに落ち着いたダナの口調にアンサーの口調も弱々しくなる
「何が・・?」
「この世界に僕一人しかいないって事・・」
アンサーは目を閉じかたを
「もうこの世界には生体反応は全くない・・間違いなく生きてるのはお前だけだよ」
「絶対?」
「ああ・・絶対だ」
「そうなんだ・・」
「寂しいのか?」
「別に・・アンサーがいるから一人って気がしないだけ」
少し間を取り
「それにさ!もうこの世界とお別れなわけでしょう・・?もう二度と戻ってこないんでしょう!?」
アンサーはただそれに黙ってうなずく
「だから、思い切ってこの世界の僕の生まれたところの・・空気吸ってみたいって思っただけ・・」
ダナは少しうなだれた後
「どうしてなんだろう?こんな!こんな嫌で最低な世界なのに!僕に一度もやさしくなかった世界なのに・・・」
「行くぞ・・」
アンサーはそれだけ言うとうなだれるダナの肩をつかみ一緒に何処かへ歩いていった・・・
ちょうど歩き去った直後・・不気味な雲が星を隠し・・灰色の雨が降り出した・・