議員宅
「新聞やなんかではダラードって呼ばれてる」
どこか愉しそうにタキシード姿の男_ダラードが名乗ると、同時に議員達の時間が一瞬停止した。
ダラードとは近頃噂になっている殺し屋である。彼は依頼された仕事を確実にこなし、なおかつ現場に誰かがたどり着く頃には姿を見ることなどほぼ不可能という桁外れの存在。仮に姿を見たとしてもそれはシルエットかただの点でしかない。
そんな男が目の前に立ち塞がっているのだ
凄まじい早さで緊張感が増していく。議員の新米にいたっては今にも倒れてしまいそうだ。
「ん?どうした?もしかしてびびってんのか?」
軽口を叩く。とはいえ図星でもある。
完全に気圧されている現状。
その現状に耐え切れなくなってきたのか、入口から離れたところに居る男が不穏な動きを見せる。だが、ダラードは敢えて無視して言葉を紡ぐ。
「おいおい、そんなにガチガチするなよ。ほら、普通は目的とか聞くもんだろ?」
ナイフを器用に指で回しながら辺りを見渡す。
そして、先ほど不穏な動きを見せた男がちょうど死角に入った瞬間
「死ねぇ」
男は懐からハンドガンを取り出しダラードへ向け・・・首がぼとりと床に転がった。
「ひぃ」
議員達は一瞬の出来事に数秒遅れて目を向ける。
すると、議員達の顔に大量の血飛沫が飛んできた。
「あ〜あ、せっかくのタキシードがだいなしだ」
血飛沫の奥には先ほどまで入口にいたダラードがタキシードを見ながらぶつぶつと言っている。
そして、殺し屋ダラードは今まで見せていた笑顔のまま
「さてと、そんじゃそろそろ」
目だけをまるで獲物を見つけた猛獣のような瞳にかえた。
「死んでもらうか」