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ダルクは一人、昔を思い出していた。
国境ざかいにある、山へ登っていた時の事だった。
そのときの目的は、薬草の調達と
山の民へ、教えを広めるためだった。
しかし、登っている途中人を見つけた。
近寄ると、少女がうずくまっているのであった。
それが、プリスだった。
プリスはまだ幼く、山で一人泣いていた。
ダルクは驚いたが、とりあえず理由を聞いてみた。
プリスは、涙ぐんだ声で言った。
「お父さんと、お母さんが殺されていたの。
土と遊んでから、帰ったら死んでいたの。
家に帰る時、土に言われたことと合ってたの。
土は、早く帰らないと大変な事になるって。
私は、走って帰ったのに・・・」
これを聞いたダルクは、胸に銃を撃たれるぐらいひどく心を打たれた。
そして、気になったのはプリスが、
大地の言葉を聞けるという事だった。
厳しい修行を積んだ僧侶だけが、
聞こえると言われていた。
ダルクはこれを神などではなく、
この地のどこかにいる、精霊の仕業だと思っていた。
ダルクはそんなことを考えながらとりあえず
プリスを背負い、町まで戻った。
それから、10年。
プリスには、自分のできる限りの事はしたし、
呪文も、知っているものすべてを教えた。
「プリスもそろそろ、修行に出なければなりませんね。」
ダルクは、妻のジャンヌに言った。
「ええ。私もそう思うのですが、やはり今まで
娘同然に育ててきた子です。
行かせたくないという気持ちはあります。」
ジャンヌが微笑みながら答えた。
「何か良い機会はないのだろうか?」
ダルクは、悩んだがもう、夜中になっていたので
明日考えようと思った。