壱章その五「WASH Heart」
フォードが立ち上がった
レンチを構え直し、再び僕を襲う やはりあの装置の仕業なのか?
自分自身では取材なのに、こんなに早く戦うとは思わなかった。 今回の取材は何時いかなる取材を上回る大変さを誇るかもしれない。
フォードが振り下ろしたレンチが地面に当たる コンクリートの塊が辺りに飛び散った
最早人間の出来る技ではない そういえばレーベル・ゲインの本では、「人の体の限界は、心が左右する。己が出す脳のアドレナリンにも作用する、だが、心がプログラム、体がハードと考えても良いと私は思う。ハードにも必ず限界はある、矛盾してるが、プログラムが度を過ぎればハードは崩壊するだろう。」
まさにその通り、体が幼くても、力が大人になるのも、心のコントロールで、やっている事。
コンクリートの小さな塊に視界を奪われる
フォードが消えた
何処だ?
ナイフを目線の下辺りに構え、姿勢を低くした
これは、上からの奇襲以外を防ぐ為の体制だ
左から地を蹴る音が聞こえた ガッ という音だ
すごい速い、いや、受け止めるには大丈夫なスピード
コンクリートのかけらを振り退け、後退した レンチをナイフで受け止める
その瞬間、ナイフから金属が壊れる音がした
レンチを跳ね退け、フォードの鳩尾[みぞおち]を蹴った
「っぐぅ!!?」
フォードはそのまま倒れた しかし、また起き上がるだろう
どうすればいいんだ!?
「背中の装置を切るんだ!!!」
誰かの声が響く
だが躊躇してる暇も無い そのまま壊れかけたナイフで装置を叩き切った
バリィッ!
装置が背中から剥がれ落ちた そして僕はその装置を急いで回収した
取材のネタになるからだ
「ふぅ…、何とか終わった………。」 一息ついてる暇は無い筈だが、後ろから誰かが来た
「いやぁ、素晴らしい。君は一体何者なんだい?」
この辺りではあまり見かけない異国の服を着た男がいた フランスの服か?ぴっちりとした服装だった。
「………。」
僕は怪しがった
「質問に答えて貰おうか?」
「…僕は記者だ。名前はレム・トレード。」
「私はベルギー・ライン。心理学の教授だ。」
続く