雪の華?

龍王  2006-06-24投稿
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朱斐が顔を伏せ、傍に立っている黒峯に胸が張り裂ける思いで聞いた。

「──……黒峯…あなた父様の命で見合いをして婚約者がいるのでしょ?」
「……はい」
「婚約者を……その方を愛しているのですか…?」
「──……まだ…数回しか御会いしていませんが……礼儀作法を身に付け立派人柄を持つ方だと思いました。……いずれ結婚すれば愛情も芽生えると思います」

黒峯は嘘偽り無い返事をすると、朱斐は顔を上げニッコリ笑った。

「私は……あなたの幸せを願う。もし……愛せない相手なら父様に無理にでも破棄を願おうかと思いましたが……あなたが結婚する気なら私は……二人を祝福します。婚約おめでとう…黒峯」
「……もったいなき御言葉…ありがとうございます」

朱斐が笑顔を絶やさず言葉を続ける。

「父様は忙しいの?出来れば直接話たいのですが…」
「社長は…かなり激務をこなしているので…時間は無いと思います」
「そう…ですか…ならこの見合いの相手に会ってから婚約の話を考えますと伝えて下さい」
「分かりました…」
「相手の方を少しでも嫌だと感じたら断るとも伝えて下さい。それで父が何か言ったら代理の方でもいいので私に伝えて下さい」
「──……はい」

朱斐が、黒峯に見合い写真を返すと、ソファーから立ち上がり黒峯に抱きついた。

「Σ!朱斐様…」
「覚えていますか?私が十二歳の時もこんな事があったのを…」

朱斐がギュッと黒峯の服を掴み強く抱きつく。

「…」
「あなたは…私を愛せないと言いました。今でも……変わりませんか?黒峯…」

幼かった朱斐は今では大人の女性に見えるまで成長している。

「──ッ」
一瞬だけ黒峯は、朱斐を抱き締めた。
朱斐を包み込むように腕に抱き締め、すぐに押し放した。

「……用件はすみましたので帰ります。失礼します朱斐様」

朱斐と目を合わせず、逃げるように黒峯が立ち去ろうとした。

「黒峯!私はあなたを…まだ…」
「朱斐様……あなたの婚約する相手は申し分無い方です。……その方との婚約を願っています」

黒峯は一礼すると立ち去り帰って行った。
朱斐は呆然と立ちすくむ。

「朱斐…」
「また…振られたわ。仕方ないけど……でも少しは期待してた」



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