「朱斐……お前…」
「大丈夫……黒峯の幸せを願うって嘘じゃない。だから…私は平気よ……平気」
強がりにも聞こえる発言が痛々しく見える。
「聖夜……私は…黒峯を愛する気持ちを簡単に捨てられない。だから……例え形だけの婚約でも…私は黒峯を忘れるまでしたく無い」
「当たり前だな…」
「でも……父様には言えないし…どうしよう?」
「……でもまぁ…一度会ったらどうだ?写真の感想は?」
「あなた達美形兄弟よりも綺麗な人だったわ」
「ちょっと引っ掛かるが…ならいいんじゃないか?」
「顔で好きになれば苦労無いのにね?」
「そうだな」
二人が笑い声をあげる。
「……でも…そうね…会えば…良い人なら…好きになるかもしれない」
「そうだ!男は兄貴だけじゃない!」
朱斐は微笑し、写真だけでしか知らない見合い相手で婚約者に会う事を決めた。
それから
見合い日が決まり
相手と見合いする事になった。
見合い相手の関連ホテルにて見合い。
「──……」
清楚な白いワンピースドレスを着て着飾っている朱斐は、席まで案内されている。
うつ向き、あまり乗り気では無い様子。
「あなた…朱斐さんですか?」
「えっ?」
歩いていた朱斐の横から突然話しかけてきた。朱斐が顔をあげる。
「あなた…」
「初めまして、朱斐さん」
席に案内される前に、見合い相手に会った朱斐はびっくりしている。
「あなた…白藍…さん?見合い相手の…」
「そうです。少し早く来たんで待ってました」
「そ…それは申し…Σキャ!」
ニコニコ笑顔を絶やさない白藍が、朱斐の手を掴むとそのまま走り、朱斐を連れ去る。
「白藍様!」
「悪い!親父にはうまくいっといて!」
付き人に白藍が顔だけ後ろを向け、謝りながら逃走した。朱斐も連れて。
「せ・聖夜ι」
「朱斐様!」
聖夜は呆然と見送り、朱斐は連れ去られた。
「タクシー!」
「あ…あのι」
「いいから!いいから」
ドンッとタクシーに乗せる。
「ど…どこに行くんですか?」
「まぁ適当に」
「えっええι」
タクシーは朱斐の行き先も分からないまま発信した。