「何て事だ、あのエリザベス人形が…」
思わず手で後頭部辺りを掻くアースル。
愕然とした思いで宙を見上げた。
「…」
ルークやジョージはジッとアースルを見つめてている。
アースル、大きな溜め息が出る。
娘ジーナが大切にしていたエリザベスが、ただの人形でなかった事にショックを隠しきれない。
―奇怪な人形を、娘に買い与えてしまった―\r
…と言う後悔の思い。
知らなかったとは言え、父親として罪悪感を感じている。
死ぬまでずっと大切にしていた人形が自らの生命や意思を持ち…
生き物のように動き回っていた事を、娘は知っていたのだろうか?
アースルの問いに、キャリーは答えた。
「ジーナお嬢様は、知っておられました」
「知っていたのかッ!?」
「ハイ」
「とすると…、娘が亡くなったのは単なる病気でではなく…、あの人形のせいだとも考えられるじゃないか」
ジッとアースルを見つめるキャリー。
「動く人形を毎日見続けた事で…、ノイローゼになってしまった。
…そう、仰りたいのですね?」
「誰だってあんな奇怪なモノを見たら、頭が変になる。ましてや、人形と毎日接していたとなれば尚更だ。娘は内心では相当、怖かったハズだ」
「…」
「あの時は君、どうして人形の事を私に報告してくれなかったんだ?」
「お嬢様から口止めされていましたから」
「何故?」
「あの人形が動くって事が分かれば、棄てられてしまうと思われたからです」
「フツーそうだろう?
あんな薄気味悪い人形置いとくなんて、どうかしてる」
「私たちから見れば薄気味悪い人形でも、お嬢様にとっては大切な宝です。毎日、人形と会話したり遊んだりしていましたから」
「…」
何も言えないアースル、複雑な気持ちである。
それまで話しを聞いていたジョージが人形に関する質問をした。
「人形の事で分からないのが…人形がいつ、どこで、誰が、何の為に作ったのかと言う事です。
会長は何か、御存知でしょうか?」
「うーん、実は私も知らないんだ。あの人形は、娘がまだ小さかった頃に街の人形館で安く手に入れただけだからね。
娘があの人形をとても気に入って、欲しいってせがまれた」