「俺つゆだく」「俺も!」
「僕は並で」
「あたし大盛りーっ!」
「…大盛りかよ」
とある牛丼チェーン店で、俺達は腹ごしらえをする事にした。
「いっただきまーす」
四名が一斉に横並びになって左手で箸を使う光景は、ちょっと人目を引いていたようだ。
新たに来たお客の、一瞬ギョッと驚いた顔が印象的だった。
「いやーっ、恐れ入りましたエリカ様」
石島康介が冗談半分に、品川恵利花を拝んでいた。
峠昭彦はいつもと変わらぬ笑顔でコックリ頷いている。
かく言う俺、倉沢諒司も彼女の歌唱力には、はっきり言って驚かされた。
「そう? バンドやんなくなって毎日カラオケ三昧だったからね〜。
学校でもボイトレ(ボイストレーニング)やらされてたしぃ」
「学校?お前幾つだ?」
「来月で二十歳〜。
あ、別に高いプレゼントいらないからね〜っ♪」
「…エリカさん、それ絶対に要求してますよね?諒司クンに対して」
「いや、…なぜに俺な訳?全員っしょ」
「あらァ、悪いわねェ諒司くぅ〜ん」
「頼むから、ウチの鬼店長の真似やめてくれる?……」
「あんな美人を怒らす奴が悪いんじゃない?あはは」
「いや、……」
さすがに『原因はお前だ』と突っ込むのは思い止まった。
…突き詰めれば、全て自分の普段の行い(ナンパ好き)に端を発しているからだ。
それに、俺は本気でエリカの才能を買っていた。
あのドラムとボーカルが加わる事を思えば、プレゼントの一つやふたつ安い物、…
と安易に考えていた俺が甘かった。
まさに「後悔先に立たず」ってヤツだ。