さわるな。

アイ  2008-12-15投稿
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ふれるな。

私にふれるな。

私の心にふれるな。

うずくまって隠す、何よりも大事な心臓。

ドクドクいってる。

私は恐怖に目を見開く。

さわるな、さわらないで……。

傷つくのが嫌だった。

せっかくここまで守ってきたのに。

生まれてからずっと大切に守ってきたものがあるのに。

世界に汚される。

ふれるな。

お前はふれるな。

汚い手でふれるな。

私の、何よりも大切な想いに。

貫いてきた生き方も。

信念も。

道徳も。

あざ笑いながら、奴らは奪ってゆく。

どうして。

涙が落ちた。

私はどこで間違えた?

心を守り損ねた?

染まってないはずだった。

私だけはと。

私だけは正しくあろうと。

たとえ周りがどんなに酷いことをしていても。

なのに。

結局、同じ。

私もただの人間だった。

ただのおごり。

私は一体何になろうとしていた?

神か仏にでもなるつもりだったのか。

――は、笑える。

それなのに私は。

相変わらず胸の辺りを抱き締めて。

心臓を。

腐った器官からなるそれを。

よどんだ血液が流れ下るそれを。

相も変わらず、守っている。



さわるな。

私にさわるな。

お願いだから。

もう何もなくさせないで……。

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