さおりは病室に入った。
たくやはまだストラップを眺めている。
『思い出したっ?』
『・・・どっかでみたような・・・』
『たくやがくれたんだよ。あたしが、高校受験するときにお守りにって』 『そうなんだ・・・』
『うん。あたし、そのお守りのおかげでまたたくやと同じ高校に進学できたんだと思うんだ』
『なんで?』
『そのストラップを見ると、たくやが頑張れって言ってくれてる気がして・・・』
『俺がこれを・・・』
今日は晴天だ。
晴れ渡る空が気持ちいい。
『ねえ、ちょっと外の空気吸わない?』
『うん。そうしよう』
たくやは怪我をしていて歩けないので、さおりに車イスを押してもらった。
『あ〜っ、気持ちいい』 『ああ、そうだな』
たくやは空を眺めた。
それにつられてさおりも眺めた。
『久しぶりに見た気がする』
『あたしも』
『俺は・・・どんなやつだった?』
『今と変わらないよ。あたしのことを覚えてないことを除けば(笑)』
『そうなんだ』
『いつも優しくて・・・自分のことより周りの人ばかり気にするの』
『・・・そっか』
二人は散歩を終え、病室に戻った。
11時からリハビリが始まる。
『もうすぐリハビリだ』 『なにするの?』
『まずは、カウンセリングらしい』
『そうなんだ』
『体動かす練習はまだ無理だって』
『うん。まだ早いよ』
『そうだよな』
11時になり、カウンセリングを受けた。昔のことはだいたい覚えていたが、最近のことになるとまったく思い出せない。
カウンセリングを終え、病室に戻るとさおりがリンゴを剥いて待っていた。
『おかえりっ。リンゴ剥いたから食べて』
『ああ、ありがと』
『そういえば、今日みんなお見舞い来るって』
『みんな?』
『そう。でも・・・覚えてないよね。みんなには、ホントのこと言う?』
『ああ、そうしてくれ』 『うん、分かった』
午後の2時頃、みんながお見舞いにきてくれた。 でも、僕はやっぱり誰一人としてわからない。
『よっ、たくや!元気かぁ?』
さおりがみんなにすべて 説明した。
『あのね、みんな・・・』
説明し終わると、みんな茫然としていた。
親友のしんやがたくやに言った。
『おい、まじかよ・・・。俺のことも覚えてないんか?』
『ごめん・・。君は?』
しんやはショックを受けていた。