「ありがとう…」
寂しそうな背中で私にこう告げる父
『余命3ヶ月です』
突然の宣告
そして過酷な病との闘い
父は強かった。いや、私が強い人だと思っていたのかもしれない。
夏の終わりの蝉のか弱き声よ
初夏のあのたくましさはどこへ行ったのか?
暑かった私の頬を冷やすように
涙がこぼれ落ちた
あるなんでもない残暑の日
父は帰らぬ人になった
さっきまで生きていた父の唇に
笑みがこぼれおちていた
それを一つ残らずかき集め
胸に刻み
愛しき人よ
幸せをありがとう…
「ありがとう…」
蝉の鳴き声
かき分ける夏の暑さ
そのたびに思い出す