彼を失ってから自分の心に大きい穴があいたのを感じた。
私は亮太を選んだのに…
傍で支えてくれる優しさを…選んだのに…
涙が溢れて止まらない。
気がつくと彼のお母さんと約束をしていた日になっていた。
うちの外に出るのも久しぶりだった。
凍える寒ささえも胸に響かない。
私はまだ現実を受け入れられずにいた。
彼の位牌を見るまでは…
久しぶりに訪れる彼の家。インターホンをならすと聞き慣れた、彼のお母さんの声がした。
久しぶりの再会は変わり果てた姿だった。
「なお…」
苦しくて位牌の前にしゃがみこむ。
こんな再会…嫌だよ。
「大丈夫?」
「すいません…」
「無理もないわ…私もまだ受け入れられずにいるの」
そう言って私を抱きしめてくれたおばさんは痩せた気がした。
場所をリビングにうつしておばさんが私にクッキーの缶箱を渡してくれた。
「開けてみて」
おばさんの声が震えていた「はぃ…」
箱の中身は、手紙だった。なにげなくとった一枚をあけてみた。
「きっと…出せなかった手紙達だと思うの」
私の目からは涙が溢れた。おばさんも泣いていた。
それは彼からのあいのうただった。
小さな小さな愛が箱にはつまっていた。