闇が辺り一面を覆い、草木のざわめきが不気味なものに変容する時刻。
ラトとその配下の騎士合わせて十名余りが、砦の前で立っていた
「ラト様…本当に敵は現れるのでしょうか?」
側にいた一人の騎士が不安そうな表情で、ラトに尋ねた。
「分からん。だが、今は宰相殿を信じて、待つしかなかろう」
ラトは砦の前にある篝火を眩しそうに見つめながら、首を横に振ると、一つ小さく息を吐いて答えた。
その時、闇の向こう側に二つの人影が現れた。
「!」
ラトと周りの騎士達はそれを見た瞬間、一斉に緊張の度合いを高めて、剣を抜いた。
「そこに居るのは…誰だ?」
ラトは剣を構えながら、篝火の明かりが届かない場所に立っている二つの人影を見据えた。
「手際がいいな…まあ…同じ事だ」
一つの影が不気味に笑って、篝火の明かりが届く範囲までゆっくりと進んで行った。
「…」
筋骨たくましい巨大を持つ男が現れたのを見ると、ラトと周りの騎士達は剣の柄を握る手に力を込めた。
「俺の名はグラムだ。覚えとけよ。…まあ、生き残れたらの話たがな…」
グラムはそう言ってゆっくりと剣の柄に手を掛けると、凄まじい速さでそれを抜き放った。
「たあっ!!」