千葉の生活も、鹿児島の生活も立がいないから すごくつまらなかった。
兄は中3という中途半端な時期の転校ということもあって、荒れた。
優しかった兄はもうそこにはいなかった。
しほの中学校生活が始まってしばらくしてからのこと。
プルルルル…
プルルルル…
「はい。どちらさまですか?」
「あ、えっと、俺、淳!小学校一緒だった!覚えてる?」
「覚えてるよ!中ちゃんでしょ?どうしたの?2年ぶり!」
「いやぁ…今すぐ隣におまえと話したいっつぅ奴がいんだけど、ちょい替わるわ」
もしかして…
もしかして…
「しほ?おれ」
おれって誰よ。全く相変わらずえらそうな感じ。
「立でしょ?どうしたの?なんか用?」ちょっとぶっきらぼうに答えた。
久しぶりに話せたのに、しほってば なんて冷たい…立が電話かけるまえどんな気持ちだったかも知らずに。
「おまえ…学校どう?」
しほは、嘘をついた。
「立がいないから、超楽しい」
「なんか…おまえなまっとる。鹿児島弁って難しいな。なに話しとるかわからん」
と言いつつもしばらくお互いの近況を話した。
「ふ〜ん、そっか。あ、こっちの写真送るから、おまえもそっちの写真送れよ」
「わかった」
「じゃ、そろそろ。おれ、公衆電話なんだわ。切れそうだから…きれるまで話すべ」
「みんなは、元気?
しほの電話番号どうやって知ったの?」
「みんな元気だぞ!みんなの写真も撮って送ったるから。待ってろ!おまえの……………」
プーップーップーッ
切れた。
なんだよ、中途半端なやつ。しほは嬉しかった。突然の立からの電話。
立ってあんなになまってたっけ?ってか、何話してるか半分も理解できなかった。
この時はまだ立の声が聞けるのは、これが最後だなんて思いもしなかったんだ。