議員宅
ダラードが言葉を発した後は正に惨劇であった。
銃を抜こうとすればその瞬間に首が切られ、逃げようと入口に向かえば心臓を一突きされ、華やかだった部屋は赤黒く染まっていった。
その最中にもダラードの表情は全く変わらず、強いて言えば斬るたびに一度瞳が大きくなることぐらいであろう。
時間でいえば5分で起きた事件。
現在では既に議員は一人になっており、ナイフを向けられていた。
ガクガクと震えながらダラードを見詰める。
「よし、あんたが最後だな」
ダラードの目が元に戻る。
「か、金ならある。だから命だけは」
議員はどこぞの漫画の様なことを言いながら、少し後退した。
「おいおい、俺はダラードだぞ?依頼を確実にこなすのが俺だ」
後退した距離と同じだけ歩み寄る。
すると、また後退しながら言葉を紡いだ。
「わかった、その依頼の額よりも高い金を出す。だから命だ・・・」
「お前さ、なんで俺が殺しに来たかわかってる?」
議員の声を遮りながらさらに一歩前進する。
「今回の依頼主はお前らがこういうことしてるってことを知ってるから依頼してきたんだ」
そんな会話の最中も移動は続き、とうとう議員は壁に追い詰められた。
絶望的状況に議員は今にも泣き出しそうになりながらダラードを見詰める。
もはや死ぬことはわかっている。故に彼は彼なりの覚悟をしてダラードを見詰めているのだ。
しかし
「あのよ、議員さん」
そんな彼を知らず、ダラードはナイフを向けたまま突拍子もなく質問を繰り出した。
「右腕が紅くってでかい傷負ってる男って知ってる?」