私は時々一人で、特に夜中を狙って、誰もいないコンクリートの 中を歩きに行った。
マンションの灯りはぽつぽつと寂しく、はるか下の私の足の着く水平は、季節を問わず無慈悲な冷たさに覆われている。
その場では私だけが生きているような気になり、安易な緊張感に心を一人揺らすのである。
こうしたことを繰り返してきたこともあり、20年以上住んできたこの町によって、私の源風景は、美しい自然ではなく、巨大な石の立方体と、表情の無い海で作らるようになった。
第一章
私は今まがりなりにも、大学生になっている。
だが私はいつの頃からか、苦労して入った大学に、興味感心を持たなくなってしまっていた。
いや、もともと大した志しも無かったのだ。
親は二人とも好きなようにしろと言っていたが、私は親の顔を建てないといけない、もっと言うなら、自分は周りに何も考えていない馬鹿だと思われたくない、という強迫観念に知らず知らず突き動かされていた。
だが、それらも理由にするには弱く、実のところ私はただ自分が将来を忘れられる仮宿に居座って居たかっただけなのだ。
最近はまともに学校に行かず、親の出払っている家でひたすらとゴロゴロするばかりである。
出掛けると言えば、パチンコとバイトだけで、頃合いの時間に帰宅しては親に学校に言ってきたように、もっともらしいことを言うのである。
ギャンブルに溺れる私は慢性的に金が無く、それも助けて、私の平日一日と言えば、町をぷらぷらと歩いては公園で時間を潰し、古本屋で時間を潰す無為なものだ。
ギャンブルに溺れるということは、どうやら金の貴重さを忘れるだけでなく、金は働いて稼ぐという原則を忘れてしまうようだ。
ましてや私は実家暮らしの為、衣食住への不安は無く、金が無くてもどうにかなるという幻が前述のことに拍車をかけてしまっている。
持ち前の自堕落さも助けて、今のバイト以上に働くこと、仕事を探すことを放棄してしまっている。
時間は本当は余るほどあるというのに。