議員宅
ゲルドはさっさと入口に向かってしまい、それに戸惑いながらリクトも後をついていった。
「急にどうしたんすか?」
リクトは入口の門を開けているゲルドに声をかける。
「いや、なぜか嫌な予感がした」
「嫌な予感すか?」
彼が感じたと言ったのならば感じたのであろうが、リクトはそんなもの微塵も感じていないため、少し呆れたような顔になった。
「ああ、まあ予感だがな」
てくてくと二人は歩き、玄関へ向かう。門から玄関まで少々距離があり、周りには観賞用の植物が植えられている。番犬なども飼っていそうだが、残念ながら一匹もいない。
そんな中を二人は歩き、玄関へたどり着く。
そこまではなんら異常はないだろう。
しかし、彼らは玄関のドアノブが視界に入った瞬間に気付いてしまった。
彼らが見た光景。
それは鍵がかかっている筈のドアノブが丸々失くなっているドアであった。
「これって何すかね?」
言葉自体はいつもと変わらない調子だが、腰に常備しているハンドガンへ手を回す。
「さあな。だが、いい状況ではないだろう」
ゲルドも警戒の色を見せるが、何か武器をすぐに手に取る準備は一切していない。その状態で彼はドアノブのないドアをゆっくりと開き、二人同時に中へ進入する。
しかし、そこにいるのは日常的作業を繰り返しているであろう使用人たちだった。
「嫌な予感てこれですか?」
警戒を解きながらたずねるが、ゲルドはその言葉を無視してさらに奥へ進む。
周りの人々は何がなんだかわからないといった様子で彼らを見ており、一応ついていっているリクトもイマイチ意味がわからなかった。
だが、すぐに彼は理解することになる。
彼の勘が正しいと、議員達がパーティーをしている筈の部屋で