諒吾宅
美香が考え始め、そのおかげで新聞を読み終えた諒吾が時計を見ると軽く30分ほど経っていた。
さすがに足が痺れたのか、美香は正座を崩している。
諒吾はよくもこれほど悩んでいられるものだと思いながら、美香の顔を見てみた。
目は二重で髪は短めに整えられており、どうやら美人の部類に入るようだ。顔もそうだが声からしても活発なイメージが伺えられ、実際におしとやかではない事が理解できる。
しかし、なぜこうも同じ世界の住人の家に落ちてきたのであろう。まあ、本当に同じ世界から来たのかを確認してはいないのだが。
「よっし、決めた」
急に美香が声を上げ、その声に驚いた諒吾は少し体をびくつかせる。
「ねぇ、この辺に面白いところって無いの?」
「はあ?」
急な質問に思わず声を上げてしまった。
「何でまた?」
「何でって、ダメ?」
どこか色っぽい瞳で見詰められ、一瞬反応に困る。
「いや、ダメではないが、そんなの知ってどうするんだ?」
すると美香はきょとんとした顔になり
「観光したいに決まってるじゃない」
と当然のように返答した。
「はあ?」
先程と全く同じ反応をしてしまったが、それは当然のことである。落ちて来た生命体というのは初めにパニックを起こしてしまうものだ、と聞かされていたが彼女は既に外へ観光しに行きたいというではないか。
「まあ、行きながらでいいから紹介してよ」
彼女はそういうと諒吾の腕を掴み、無理矢理引っ張り出そうとした。
「おい、待てって」
一方の諒吾は実際抵抗する気はなく、腕を引かれるままに外へ出ていく。その途中で持っていた新聞を投げ、入口のところに置いてあるコートを手に取った。
新聞記事
[第十五区間にて解体屋エルド逃走中]