「やあ、諒司クン。 お買物ですか?」
「倉沢さん、こんちは〜」
「あ、あぁ… こんにちは麻紀ちゃん。
昭彦と付き合ってるなんて全然知らなかったよ」
「いや、これも君とエリカさんのお陰ですよ。
それでは、ご機嫌よう」
「倉沢さん、またね〜」
落ち着いたムードの峠昭彦と、ほよよんとした感じの九里麻紀。
なかなかお似合いの二人に見えた。
数日後
「よォ、諒司ィ!」
「諒司さん、おひさーっ」
「お、… お前らも?」
「ヒナ、これから康介さんと映画なんですぅー♪」
「ま、そーゆーこっちゃ。そんじゃなーっ」
「またね〜」
チェーンをジャラジャラさせた革ジャンに金髪の石島康介と、小柄で、あどけない顔立ちの小坂雛…
(何だか、中学生の子拉致ってるみてェだな……)
康介たちをボーッと見送るうちに俺の待ち人、品川恵利花がこちらに気付いて、遠くから手をブンブン振っていた。
「リョージどしたん? いつもより間抜けな顔して」
「エリカおめーわっ! …会うなりそりゃないだろ?」
「冗談だよ〜っ♪ 何だかみんな上手くやってるみたいだね、あはは」
そう屈託のない笑顔を見せるエリカに、俺はあえて言葉を重ねず腕を組んでくるのに任せていた。
「あら、あなた方… 良かった、ちゃんとお付き合いしてたのね、うふふ…」
「あ… あなたはあの時のお客様」
「…何のご用ですか!」
「あらあら、…誤解されるのも無理ないかしら?」
やれやれといった表情で肩をすくめた人物は、バイト先のファミレスで携帯番号のメモをくれた女性であった。
「わたくし、何時もここにおりますから。
よろしければ、是非ともお二人ご一緒にいらして下さいな」
その言葉と共に渡された名刺には、とある占いのお店の名前と所在地が記されていた。