撮影中篤志は風花に大してぶっきらぼうに接したり、風花の演技を馬鹿にしたり、お世辞にも優しさなど微塵も感じさせない男だった。
しかし篤志のぶっきらぼうな態度は風花の美しさ、純粋さに曳かれていた気持ちの裏返しでもり、篤志の高いプライドがそうさせていた。
そんな篤志に風花は異性として初めて曳かれ、努めて明るく接した。
お互い曳かれ合う二人が付き合うのには大して時間はかからなかった。
篤志と付き合いだすとぶっきらぼうな態度の中に見える小さな優しさに風花は喜び、少女ながらに
(この人を私が守って上げたい)
などと真剣に思うようになていった。
言い方は悪いが湖の中の水の一滴は何とも思わないが、砂漠での同じ一滴の水がすごく貴重に見えるようなものだった。
まだ幼かった風花は篤志の持つ怪しい魅力にどんどん引き込まれていった。
しかし日が経つにつれ風花はテレビやスクリーンに出る機会が増え、逆に篤志はその態度や素行の悪さから人々から敬遠され俳優としては二人はまったく逆の立場になっていった。
そうなると篤志は黒い人間との付き合いが増え、それがますます人々から敬遠されるという悪循環に陥っていったのであった。