篤志は毎日酒、女、ギャンブルなどますます落ちぶれていった。
それにつれ借金も増えて、到底篤志には払うことができないような額になっていった。
毎日借金取りから逃げるような生活になりかけていた時、ある暴力団幹部から篤志は呼び出された。
と、いうよりも無理矢理連行されたと言う方がこの場合は正しいだろう。
身なりがきちんと整えられた男は見た感じは決して暴力団には見えず、物腰も非常に優雅でさえあった。
その男は煙草に火をつけながら紳士的に優しい口調で篤志に語り掛けた。
「桐山さん、貴方相当にお困りになられているようですね。今日来てもらったのは実はその事でお話が有りまして。」
男は写真週刊誌を桐山の前に差し出し話し続けた。
「なんでも桐山さんはあの武藤風花さんとお付き合いされているとか、いないとか…」
男の狙いは定かであった。そもそも回収の見込みの無い売れない俳優なんかに大金など貸すはずが無い。狙いは最初から風花だったのだ。
「どうです?風花さんとご結婚でもされたら?聞いたところによるとあなたよりも風花さんの方は貴方に随分とお熱らしいじゃないですか?」
桐山もその事は薄々考えていた事であった。