「…」
グラムは苦い顔をしながら、先ほど出来た傷口に剣を当て、光の力でそれを治していった。
「…」
ラトは二人の様子を伺いながら、三十分程前にあったロザラムとのやり取りを思い出していた。
ラト達が来ると、ロザラムは何かを覚悟したような表情で、命令通りに一人だけで彼等を出迎えた。
「ロザラム。君に至急伝える事がある」
「…何でしょうか?」
「君はどうやら、捨て駒にされるらしい」
「!」
それを聞いたロザラムは一瞬、息を止めて、驚きの表情でラトを見た。
「奴らはここエリグラム砦を襲い、君を殺し、我々を他国に攻め込ませるように仕向けるつもりだ。これは信用出来る所から出た情報であり、また、我々も信じている」
ラトはロザラムを厳しい表情で見つめながら、しばしの沈黙の後、
「選択肢は最早無いと思って欲しい。…あるとすれば、我々と共に奴らをここで叩くか、或いは…」
そう言って、静かに剣の柄に手を掛けた。
それに倣って、側に居る四、五人の騎士達も剣の柄に手を掛けた。
ロザラムはそれを見て、顔を歪めた。
「ロザラム。お前の守った姉妹は今、王宮にいる」
「何っ!?」
「勘違いするな。彼女達が望んでそうしているんだ」