議員宅
「黙れ」
十分過ぎる威圧感を纏った一言。しかし、ダラードは一切そのことを気にしない。
「あっはっはっは、随分と酷い言い方じゃないか?」
そんなダラードの態度はゲルドの額に血管を浮き立たせる。
「そんなにかまってほしいか?」
「残念、俺はそんなにマゾじゃない」
「ほう、そうか」
ゲルドは落ち着いたような声色で言葉を発し
ミチッ
「ヌアァァァァ」
奇妙な音がなるほど後ろに回したダラードの手を捩り込んだ。
「なめるなよ。俺は区間民を守るためなら鬼にでもなる」
ここまですればたいていの者は抵抗する気を無くすはずである。現に、ゲルドは何人かの凶悪犯に同じ手を使い黙らせることに成功していた。
(ここまですればなんとかなるだろう)
そう判断し、無言のまま後ろで銃を構えているリクトに警戒をとくように腕で指示をだす。
だが、それは甘かった。
「クックック、ハハハハハハハ」
ダラードは狂ったように笑い声を上げる。
「何がそこまで面白い?」
「いや、面白くなんかないね。むしろ気分は最悪さ」
ならば何故笑うのか。その場にいるダラード以外の者は皆同じことを思ったが、次の瞬間にはそう考えるものが一人減っていた。
メキリッ
何かがめり込む音。
さの音源は今まで沈黙していた議員であった。
ゲルドとリクトはゆっくりと議員に目を向ける。
足
膝
腿
腹
胸
首
徐々に視線を上げていき最後に見えたのは、ダラードの足が骨格を無視してめり込んでいる議員の顔であった。
「自分の足を汚さないと依頼が完了しないなんてな」