猛が話したことはあまりにも悲しい話だった。
「俺の母親は俺が小さい頃に俺をおいて家を出た」
話だしたのは、そんな幼い頃からの話だった。
「俺の親父は、いわゆる仕事人間ってやつで、だから俺は愛情も知らないければ女も信じてなかった…」
話してる間も猛はずっと下を向いていた。
「あいつと付き合っても今まで通り自由にしてた…浮気だとか騒いでたあいつがうざくて別れようって話したら自殺未遂を起こした」
「玲、こんな男の為に…」 沙笑の声が震える。
それでも猛は話だした。
「それからケンカになるとあいつはいつも自殺未遂…でも一番別れられない理由は、あいつの親父がうちの会社をバックアップしてるからなんだ」
「えっ…」
沙笑も私も言葉につまる。
「あいつの親父に別れたら融資止めるって言われて…あの仕事人間の親父が俺に頭下げたんだ」
「そんなの…」
「嘘じゃない。本当の理由」
「彼女…可哀想だよ」
「玲…」
気がついたら涙が溢れていた。
「そんなの誰も幸せじゃなぃよ。猛も彼女も…お父さん達も」
「玲はバカだよ」
「沙笑…」
「どんな理由があっても…玲の心の傷は大きい」
沙笑も泣いていた。
猛も声を押し殺して泣いていた。