先生は、確かにあたしに応えてはくれなかった。
でもたった一言。
『…人間は進化する生き物だから、今は無理でもこの先俺の気持ちが変わるかもしれないのを待ってくれるなら』
千分の一でも。
一万分の一でも。
それでもいいのか?
…はい。
たとえ、一兆分の一の確率でも。
先生は、やっぱり最後まで優しかった。
あたしは、久しぶりに保健室を出て授業に参加した。
それから、三ヶ月。
あたしはずっと待った。
三ヶ月ごときで先生の気持ちが簡単に変わるはずなんてないことはわかっていたから、まだまだ待つ気であたしはその日もいつものように先生に会いに保健室に行った。
最近は授業をさぼらずに放課後だけ来ている。
先生との約束で。
一日も終わって、やっと先生に会えると、少しうきうきしながら保健室のドアを開けた。
でも、そこに先生はいなかった。
きょろきょろと室内を見回してみるけど、誰もいない。
妙に静かで少し寂しい。
「先生ー?」
そして、翌日知る。
先生は、死んだ。
死因は交通事故。
二日前の夜、帰宅途中に横断歩道を渡ろうとしたところを右折して来た車に跳ねられて頭を強く打ったことによる出血多量でのショック死。
先生の死は全校集会の場で校長先生によって伝えられた。