「えっと、それは愛原から聞いたのか?」
言葉を無理やりに引っ張り出したはいいものの言ってからまたしまったと思ったのは言うまでも無い。
「そうだよぉ〜、どうして言ってくれなかったのかな?恋は親友だし、公浩とは幼馴染みでしょ?恋から聞かされたときは驚いたよ、ホントにどうして教えてくれなかったの?」
先程と同様に唇を尖らせながら拗ねている事を表現しているのだろう。
その姿に可愛いと思ってしまう俺は駄目なのだろうか?
それに、どうしてと聞かれても、俺の口から伝えたくなかったからだ。
それ以外理由なんて無い。
「・・いや、愛原からもう聞いたと思ってたからな・・・わざわざ俺の口から伝えなくてもいいと思っていたから」
よくこの土壇場で嘘が吐けるものだと自分を褒めてやりたい。
「恋も言ってたよ〜、てっきり浅間君からってね」
だろうな。
残念ながら俺もその予定だったからな・・・実際には、愛原にも俺の口から伝えると言っておいたからな。
まさか、先に愛原に伝えられていたとは予想外だ。
「んまぁ、そのつまりだったんだけどな。本当は、今日にでも言おうかなとか思ってたし」
本心では無いが、この場合は多分ベストの答えであろうと思った俺はとりあえず、歩を進める事にした。
俺の動きを見て由真も俺を追うような形で少し小走り気味についてきた。
「でもさぁ〜、どうして恋だったの?」
俺の心の奥底さえ見透かすかのような切れのある言葉に一瞬にして汗が引くような気さえしたが、ここまで来たらこれ以上のごまかしは無用だろう。
「愛原からは、どこまで聞いてんだ?」
もちろん、自分が思っていることと相原が由真に伝えた内容に相違が無い事を確認する為の質問だ。
逃げでは決して無い。
「えぇ〜、またそうやってはぐらかそうとする・・・恋は元々公浩のこと好きだったから、何度も相談に乗ってたんだよ。で、いつの間にかその質問も来なくなったから昨日聞いてみたんだぁ・・・」
由真の考えが全く読めなかった。
小さい頃からの腐れ縁故に少しは、仕草なり表情なりで分かるようになったはずだったのだが、俺はこんな表情の・・・まるで何かを諦めたかのような、はたまた悲しそうな瞳をしているのだろうか・・・