野沢祥子と直接、会うのは、この日が始めてで、古賀がスタジオのミキシングルームに入るなり野沢はソファーから立ち上がった。
彼女は長い髪を後ろで束ね、黒のニットにジーンズという服装である。
「始めまして、野沢祥子です。よろしくお願いします」
野沢は古賀を前に些か緊張した面持ちだ。
「どうも、古賀です」
古賀は野沢にてを差し出し握手をした。
「良いアルバムを作りましょう」
「はい」
「渡辺。デモは何曲だ?」
アシスタントデレクターの渡辺が答えた。
「15曲です」
「よし、早速だが流してくれ」
渡辺はそれに応じた。
スピーカーからピアノのイントロが流れてきた。
そして野沢の艶のある歌声が流れ始めた。