「サキせんせいだ〜!」
がき大将に集められた子は3人。桜の木の下で地面に落書きをしていたが、私を見て顔を上げぱっと笑った。
「かくれんぼいっしょにするの?」
私を見た瞬間抱き着いて来た子が、サクラぐみのアイドルこと榊美祢ちゃんだ。
茶色めの髪を揺らし、大きな瞳でこっちを見た。
「するよ〜!」
揃った前髪を乱しておでこを撫でると、嬉しそうな顔をする。
「ねーりゅうくん、だれがおに?」
「じゃんけんで決める!」
泥を払い、優しげに美祢ちゃんを見つめるのは榊由宇くんだ。
美祢ちゃんの双子のお兄さんで、いつも二人は側にいる。
その後ろに、黒髪をゆらす剣土君がいた。
彼らはどうやら、仲良しグループになっているようだった。
「はい行くよ〜、じゃーんけーんぽん!」
「かった!オレかった!」
「みねも〜」
「ぼくも〜」
「先生も〜」
「…おれまけた…」
鬼は1発で決まった。
剣土君だ。
「うぇ〜い!けんとがおにだ〜!」
流君が剣土君の背中を叩くと、少し悔しそうな顔をする剣土君も可愛かった。
「せんせー、いっしょにね、かくれよーね!」
美祢ちゃんが裾を引っ張る。
「よーし、見つからない所に隠れなきゃねえ!」
美祢ちゃんが一緒という事は必然的に由宇君も一緒になる。
面倒見の良いお兄さんである。
3人も同じ所にいてはすぐに見つかりそうだが、そんな事には誰も気付かず剣土君は桜の木にひっついて数を数えだした。
「もーいーかい!?」
「もーいーよ!!」
流君は皆に人気の隠れ場所である木の上に登った。
注意しようかとも思ったが、やっぱり止めた。
私と美祢ちゃんと由宇君は、遊び道具が入っている倉庫のウラに隠れた。
倉庫とフェンスの間からは流君の隠れている木が見える。
「せんせ〜…」
美祢ちゃんが私の腕の中でこちらを向いた。
「みねね〜…」
「ん?」
由宇君は少し離れた低いツツジの木の陰に隠れていて、こちらをちらりと見た。
「…け…」
「け?」
美祢ちゃんは俯く。
「けん…う、なんでもない…」
「?」
私のお腹に顔を押し付け、うぅ、と唸りながら私のエプロンを握った。面白い事になる予感がして、嬉しくなる。
(この小説はちょっと長いみたいです←注意)