「いや〜忘年会盛り上がったね!またやりたいもんだよ。」
「ははは。社長、もう二回目ですよ。さすがに三回目はね〜。」
新年会、忘年会、飲み会、打ち上げ…なにかある度にこのビルの十階の居酒屋にお世話になっていた。
なんといってもここから見える夜景は最高で、社長のお気に入りでもあった。
今日も忘年会が終わり、エレベーターの中で社長と盛り上がっていた。
「そういえば、奥さんとお子さんは元気かい?」
「ええ、相変わらず。子供のほうは年頃なのか、最近はあんまり口をきいてくれないんですよ。」
「まぁそんなものだろうな。娘は特にな」
「そうですね。あれ、社長今日は車ですか?」
「ん?いや違うがね。どうしてだい?」
「社長じゃないですか?地下二階押したのは?」
僕は一階に行くつもりだったが、なぜか地下二階のボタンが光っていた。
「あれ?私が押してしまったのかな?まぁ一階も過ぎた事だし、階段でのぼるかね。」
「そうですね。いい運動ですよ。」
…それにしても着くのが遅い。エレベーターはこんなに遅かっただろうか?
地下二階のランプがついているのに、一向にドアが開かない。
「…おかしいですね。社長、開くボタン押しても開かないですよ。」
「気味悪いな。非常ボタン押すか。」
社長が非常ボタンを押した。
…押せなかった。ボタンは固く、全く動かない。
「くそ!力が足りないか。」
…さっきからおかしいとおもっていた。
…エレベーターが動いている…?
ランプは地下二階のまま、エレベーターはたしかに下に降りている。
「社長…どういう事でしょう…」
僕と社長の顔が一気に青ざめた。
訳も分からずドアを叩いた。
ドアは開く気配もなく、どんどん下に降りていった。
「どうなっているんだ!いつとまるんだ!」
…その瞬間、エレベーターが一気に減速したのが分かった。僕も社長もホッと胸を撫で下ろす。
「…止まるのか?」
「…そのようですね。」
「やれやれ、良かった。どうなるかと思ったよ。それにしても…どこまで降りたんだ?」
そのとき二人は、地下二階のランプがつきっぱなしの事を全く気にしなかった。
そしてエレベーターは止まり、ゆっくりとドアが開く…。
…地獄のドアが…。
「ヨウコソイラッシャイマシタネ」