そこに立っていたのは1人の男のコ。
背は、身長162?のわたしより少し高めなくらいで、
いかにも、やんちゃ盛りといった風貌の高校生にしては少し童顔に見えるのは、そのクリッとした大きな瞳のせいだろう。
『あんたバカじゃないの?!さっきから何でついてくんのよ?!』
不覚にもわたし、一瞬このコに見とれてた。
『だって、お姉さん泣いてたから。』
『そんなのあんたに関係ないでしょ?!』
『そうだけど‥。』
『もうついて来ないいでね。今時、流行らないわよ。
こんなナンパの仕方。
じゃあ、せいぜい頑張ってね。』
コッコッコッコッ――
ベタンベタンベタンベタン――
『ち、ちょおぉ――っと!!
ついてくんなっつってるでしょ――があぁぁっっ!!』
もう!!一体何なのこのコは!!
『あ‥いや‥‥落とし物。』
『落とし物???』
『コレ‥‥。』
『???』
男のコから差し出された物を見て、わたしは慌ててそれを奪い取った。
ナ‥ナプキン。
もう、最悪だわ。
『わ、わざわざありがとう。じゃあこれで。』
男のコにろくに目も合わせずに、一応お礼をし、わたしはその場から立ち去った。
そう言えば、さっきハンカチを取り出す時に落としたんだ。
今日は何てツイてない日なんだろう。
早く家に帰って、お風呂に入って、ご飯食べて、お布団の中に入って、早く忘れよう。
でも、
あのコ、なんであんなところに1人でウロウロしてたんだろう。
イブにナンパなんてしてるより、あのコのルックスなら、彼女とデートしてる方が似合っているのに。
なぜか、あのコが気になった。
ただの通りすがりの男のコなのに。
なんでだろ。
わたしは自分でもなぜだかよく分からなかったけれど、
また、
今歩いて来た道を、ゆっくりと引き返していた。