私が若かった頃
空も街もすべてが灰色に見えていた
白黒はっきりさせる事は面倒だった
あの人に出会うまでは。
『りーこ、飲みにいかん?金入ったけん』
そういつも誘ってくれるのはユカ(22)売れっ子の風俗嬢
りーこは私。当時20歳
キャバ嬢
正直、私たちは金には困らなかった
好きなものも手に入った
嫌いな事はしなかった
ある日いつものように
ユカと新宿をふらふらしていると
声をかけられた
『ワンセット60分7000円だよ』
いつもはそんなのシカトをする私達だけど
目を奪われた
二人で声を揃え
『かわいぃ』
そこには小さな身体に金髪のズラをかぶったかわいぃ女の子が立っていた
ユカが
『なに屋?』と近づいた
その女の子は
『ニューハーフのお店だよ』ニコッと微笑んだ
『ねぇりーこ!ちょっとこの店入ってみようよ』
やけにその日のユカはノリノリだった
その時はこれから始まる長いようで短い時間の存在など誰も想像がつかなかった