街中
約30分後
エルドは街中を物凄いスピードで走り抜けていた。
「待てェェェェェ」
後ろからは大きな怒声が幾つも響く。
何故彼がこのような目にあうのか。それは彼の職業と、この区間の治安の高さが原因だった。
彼の職業である解体屋は、依頼されればなんであっても解体するねが仕事であり、相手や後のことなど一切考えないのである。
そこへ区間の治安の高さが重なり、区間会議で彼をどうにかしようと決まったのだ。
「待てと言われて待つのはそうそういないだろう」
呟きは後ろからの叫びによって掻き消される。
(多すぎるだろ、これ)
彼が思うように彼を追う人数は警官にしては多すぎる。理由を言ってしまうと、彼を追う群集のほとんどは区間民だからであった。
区間会議の当初の作戦では警官のみであったが、何をしているのかと聞かれて警官がポロッと口にしてしまったのだろう。それがどんどんと広がると同時に区間民が集まってきたため最終的にこうなったのだ。
そのような経緯をしらないエルドは、区間民はそそのかされているのだと解釈しており、下手に攻撃することが出来なかった。
絶望的現実だ。
だが、彼にも望みはある。
この区間のちょうど中心。そこにある駅には三日に一回くる汽車が到着しており、そこに乗り込むことができれば逃げ切ることが出来る。ただ、それを可能にするには絶対条件として発車ぎりぎりでなければならない。そのためこうして走り回っているのだが。
「やべえ、息、上がって、はあ、きちまった」
普段ここまで走ることのないエルドは確実に体力を消耗していた。
「はあ、はあ、後少し、もう少しだ」
自分に言い聞かせるように呟くが、やはり後ろからの声に掻き消されてしまう。
そこへ
ぽおーーーーー
発車前を告げる汽笛がなった。