最後のやさしさ

ふく  2008-12-28投稿
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君が思い描いた未来を叶える事が出来なかった

捜し求めた夢が解らず
ただ自分だけを信じて
矛盾だらけの言動と
曖昧な態度で君を傷付けて来た

形の無い愛情で何度も君を泣かせた
完成する事の無い関係に何度も君を苦しめた
涙を拭ってあげる事も出来ずに締め付ける想いを楽にしてあげる事も出来ずに君の明日を奪った

痛い程の愛情に逃げるように去って行く僕を
咎める事は無かった

『俺は駄目だな』と言い訳をする僕に
『そんな事ないよ』と困った表情をした

積み重なる僕の我が儘を君はただ黙って受け入れてくれた
僕から告げたさよならに静かに俯いた君が切なく映る

『私も連れてって』と見上げる君の目が涙で滲んでいた
『それは出来ないよ』と言う前に君が僕の肩を押した
『冗談だよ』
そう言っておどけて見せた

別れの時間が近付く
目に溜めた涙が零れない様に唇を噛み締めていた

右手を僕に差し延べる
僕の左手を強く握り
『行ってらっしゃい』
そう小さく言って名残惜しそうに手を放した
君の小さな手の温かさで僕も泣きそうになる

改札を抜けてしばらく歩いた後で振り返った
まだ君はそこにいた

もう会えない
傷付けた日々も
苦しめた日々も
もうこれで終だとしても
きっと君は孤独と闘いながら過ごして行く

小さくなった姿が健気で寂しそうで
何だか胸が痛んで
『ごめんね』と聞こえない声で呟いた

今更そんな事を言ってももう遅い

僕のその言葉に気付かずに君は手を振って僕を見送る

悲しみを堪えて最後に笑顔を見せた
どんな思いで僕を見ているのかは解らない
僕が前へ進める様に懸命に笑ってくれた

僕は
君のその優しさが
ただ嬉しかった



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