どこに落としたんだろう?さっきから全然見つからない。
それもそうだ、こんな真っ暗闇じゃ。
足元すら見ることもできないもんだ。
けどまだ正午を過ぎたくらいだった筈だ。
なのにこの闇の中。
それに身体中からの溢れるような汗。
どくどくと止めどなく滝のように溢れ出している。
そんな遠くで落とした筈はないんだ。
必ずこの近くにある筈なんだ。
誰かに探すのを手伝ってもらいたい。
この暗闇の中を手探りで歩いてみよう。
身体に電気が走るような違和感と痛みを感じるし、歩けているのか、どこが地面なのか、それすらわからない。
とにかく…とにかく声を出して誰かに助けてもらおう!!
「僕は車にはねられた。少しでも今の状況を把握したいから、周りを確認したいから、探しているんです。…目の玉を。」
(昼下がりの人通りの少ない交差点でトラックはその青年をはねそのまま逃走。頭をまさに強打された青年が倒れ込んだままに最後にこう言葉を発したように私には聞こえた。)
終わり