『あれ?!カヤノじゃん?!』
こんな、ばったりと出会えてしまうとは思わなかった。
さっき別れたばかりの男、
草島が、
その横に清純そうな可愛らしい彼女を連れて、
わたし達の前を通り過ぎて行こうとしていた。
『カヤノ。もしかしてコイツ?!
お前の気になる相手ってのは。』
通りすがりに吐き捨てる様に言われた言葉。
その声はもちろん、
わたしの隣に立つ颯太にも聞こえている。
『あんたに関係ないでしょ?!
それに、初対面なのに、“コイツ”とは何よ?!失礼だし。』
何て奴!!
『颯太、早く行こう!!』
わたしがそう言いかけた時、
颯太は、草島に向かって笑顔でこう言った。
『初めまして僕、カヤノのカレシです♪』
えっ?!
その時の草島のポカンとした表情が、
なんとも、こっけいで、
草島が行ってしまった後、
わたしと颯太は顔を見合わせて大笑いした。
『あっはっは。見た?!草島の顔!!
颯太があんな事言うから。
アイツ、すっかり信じてるよ、きっと!!
ごめんね!!
助かっちゃった。』
『どうして謝るの?!』
『え‥‥だって颯太今、カレシの振りをしてくれたじゃん。』
『振りじゃないよ。』
『えっ?!』
『だって、僕達今日1日は恋人同士でしょ?!』
あ‥‥。
なんだ。
そういう事か。
颯太の言葉に、
わたしは一瞬ドキッとした。
そして、
君のその愛しい笑顔に胸がキュンと痛くなった。