「ただいまあ」
家でテレビを見ていたら弟のカズが帰ってきた。カズは東京へ買い物に行っていた。帰ってくるなりカズは俺に買い物袋を渡した。
「はい兄さん。お土産ね」
「…今度は何買ったの?」
カズは無類のオカルトやどうも胡散臭い物が大好きだった。だから俺は今回もどうせろくな物ではないだろうと思った。カズは嬉しそうに言った。
「天国に行ける飴玉」
「何だそりゃ。この前の未来がみれる眼鏡と大して変わらないじゃん」
その眼鏡は例の如く未来などみれなかった。しかしカズは今は調子が悪いだけだと言って偽物だと信じなかった。それ故またこんな物を買ってしまったのだ。
「いいや。ちがうね。これは絶対に天国に行ける。売ってたおじさんがそう言ってたもん」
「はあ…」
すぐに人を信じるカズの性格にも問題があるらしい。
「とにかく食べてみなよ。ソーダ味だよ」
天国へ行けるソーダ味の飴玉ね。笑える。当然俺は断った。するとカズはなら僕が食べると言って飴玉を口に放り込んだ。コロコロと口の中で転がす。
「うまい!」
カズは唸った。こんなにおいしい飴玉食べたことないとまで言った。
「ああなるほど。天国に行けるくらいうまい飴玉ってことだ」
笑いながら言った。
「本当にうまいから兄さんも食べなよ」
と、カズはまた勧めた。半分仕方なく、半分興味津々で俺は飴玉を食べた。確かにうまい。これなら天国に行ってもいいかなと軽く思った瞬間俺は意識を失った。
目をあけたら俺とカズは舟に乗っていた。カズはぼーっと唖然している。
何だこれは。
何だここは。
前で舟を漕いでいた男が言った。
「渡辺弘毅様。同じく和也様。ようこそ天国へ」