「ねぇ‥、新一は?」
「新一って言う人は、優美さんのお友達ですか?」
「はい。」
「あっ!茎田さんに、電話をかけるの忘れてた!」
「お電話をかけて来ますね。」
「はい。」
「トゥルルルルー……。」「はい。茎田です。」
「加賀美病院ですけど、楠木優美さんが、目を覚まされましたよ。」
「本当ですか?」
「はい。」
「今、すぐ来ます。」
「優美さんに、伝えておきますね。」
「はい。」
「優美さん、浩輔さんが、来ますからね。」
「はーい。」
数分後、浩輔が来た。
「優美、起きたのか?
俺、嬉しい。」
「あなた…、誰?」
「優美、俺だよ。俺。」
「ねぇ、新一、知らない?」
「新一?」
「そう。優美の彼氏なの。」
「彼氏?優美の彼氏は、俺だよ。」
「あなたは、知らないわ。」
「何言ってるんだよ。」
「優美、何かした?」
「優美、ホントに覚えてないんだな。」
「ちょっと、待ってて。」
「先生、起きたのはいいんですけど、新一って言う人が、優美の話に出てくるんですけど、どうしてですか?」
「優美さんは、記憶喪失かもしれません。」
「記憶喪失…。」
「簡単に説明しますと、頭の中に、優美さんとあなたの思い出があります。その思い出が、事故のあった日、優美さんの頭の中が、浩輔、浩輔で、いっぱいだったんです。でも、ずーっと寝たきりの優美さんの頭の中から、消えていったのです。今、起きた優美さんの頭の中は、あなたとの思い出が、消えて、過去の事が、優美さんの頭の中に残っていると、私は、そう思いましたね。」
「先生、優美の記憶、戻るんですよね?」
「私は、戻ると思います。」
「ですよね。」
「つらい事もあると思いますが、つらい事を乗り越えて、幸せが、あなたと優美さんに、待っていると思います。」
「頑張ります。」