漫画喫茶クリーム
駅前の古い雑居ビル3Fにある。
学生時代から僕は全室個室のここを良く利用していた。
受付に入ると
下半身が寝間着に近い僕を変な目で見ながら
部屋を案内した。
一番奥の角部屋だ。
ドリンクバーから遠いのがめんどくさい。
ホットコーヒーとたまたま通路にあった前から読みかけだったマンガを持って部屋に戻った。
電気をつけ
イヤホンでしか音を発しないテレビを見た。
僕の起こした事件がワイドショーで取り上げられている。
評論家のヤツらが
この問題の正解を言うかのごとく持論を言う。
「この事件はあくまで
金銭目的の犯行であり、
外国の犯罪グループが関与している可能性が高い。」
アナウンサーは不信感なく真剣な顔で納得する。
まるで的外れだ。
警察は被害者の親族や知人に事情を聞いている。
まだ僕にたどり着いていないみたいだ。
日本全国で答えを知っているのは僕だけだ。
イヤ、あとは安藤奈津
彼女だけだ。
タバコに火をつけて
一息吸って吐いた。
天井に染み込む煙を目で追う。
まだ余裕があった。