アースルやルーク、ジョージを乗せたクルマが正門前にやって来た。
「こんなに人が多いとはネェ」
ジョージは後部座席の窓から外の様子を見て、驚いていた。
「旦那様、如何なされますか?」
ハンドル握る専属運転手のカートが後部座席にいるアースルに話しかけた。
「そのまま中へ入ってくれ」
「分かりました」
カートは言われるがまま、構内へ向かう。
ところが…
「あー駄目駄目!」
正門の所で警戒中の警官に制止されてしまう。
カートは窓を開けて、
「中へは入れないのですか?」
「申し訳ありません。
大学構内は緊急封鎖で、全面立ち入り禁止になっております」
アースルは窓を開けて警官に話しかけた。
「私はバーソロン財団のアースル・バーソロンだがね。モグレ警部に会いに来たのだ。中へ入れてくれないか?」
「失礼ですが、御用件は何ですか?」
「ローズマリー人形の事で、警部から連絡を受けたんだ」
「こちらに来るように、言われたのですか?」
「言われてないよ」
「それじゃあ、中へ入れるワケにはゆきません」
「人形に関して、重要な事を警部の耳に入れたいと思っているんだけど、駄目なのか?」
「警部から、そう言った連絡を受けていませんから、私の方では判断しかねません」
アースルは苛立つ思いになり、言葉を荒げる。
「だったら、警部に至急連絡したまえ!
緊急を要する事なんだぞッ!」
溜め息付く警官。
「ち、ちょっと待って下さい!」
すぐにケータイを取り出して、モグレ警部に連絡を取り始めた。
その時…
「会長! あそこにモグレ警部がおられます!」
ルークがフロントガラスの前方を指差した。
よく見ると、遠くの噴水広場でたむろするモグレ警部の姿が見えた。
間髪入れず、アースルはカートをせかした。
「すぐに、あそこの噴水広場へ行け!」
「え? でも、警察官の指示がないと…」
戸惑うカート。
アースルは強い口調で言った。
「警官1人に関わり合っているヒマはない!
すぐに行けッ!」
「は、ハイ! かしこまりました!」
カートはすぐにクルマを走らせた。
「お、オイ!」
警官は慌ててクルマを止めようとしたが間に合わなかった。