進むとは言ったもののパールの言った通り真っ暗で何も見えず、前に進むことはおろか、すぐ目の前の障害物にぶつかってしまうといった始末だった。
「前には進めないし帰ることもできなくなっちゃったわ」
「困ったなぁ・・・ん?」
タクトが懐に入れていた『木彫りの不死鳥』の頭が真昼の様な光を放ち始めた。
「どうして光ってるの?」
「分からない。でも、前に進めるようになった」
しばらく進むと意外に早く、この洞窟の終点なのであろう広く天井の高い円形状の広間が現れた。
「誰かいるわ」
パールは警戒を強めたが、タクトにはその正体がすぐに分かった。
「大丈夫。あれはウェイトだ。なーんだ、先に着いてたのか、ウェイト」
ウェイトはゆっくりとこちらに振り向いた。
「よぉ、タクト。やっと来たか。待ちわびたぜ」
すると、ウェイトは背中の鞘に収めていた大きな剣を抜いた。
「何してるんだ?変な冗談は止めろよ」
だが、ウェイトはそんな言葉を無視するように続けた。
「おかしいな。四人いたはずだ。まぁいい、お前たちが探している『木彫りの不死鳥』はこれだろ?」
ウェイトは『木彫りの不死鳥』の胴体の部分を高々と掲げてみせた。
「ウェイト!何のつもりだ!」
「忘れたのか?俺はお前たちと別れた後、あいつと一緒に居たんだぜ」
よく思い出せよ、と付け加えた。
まさか!
ウェイトと別れた時にウェイトと一緒に居たのは、R11だ。
「まさか、お前は操られてるのか?」
ウェイトはタクトを嘲笑した。
「ははははっ、馬鹿なことを言うな。まぁ、お前なら言うと思ったがな。教えてやろう、俺はルパスの本当の素晴らしさを知ったんだ」
今、タクトの目の前にいるウェイトはタクトの古くからの友であるウェイトではなかった。
「何を訳の分からないことを言ってるんだ!」
「何を言ってるんだ?本当は、お前はパラスのことを憎んでるんじゃないのか?」
ウェイトの言葉はタクトを大きく動揺させた。
走馬灯の様にあの時の記憶が蘇る。
あれは、とても平和な、いつも通りの、夕飯だった。
家族みんなで食べてた。
「父さん!」
「タクト、お前は立派な男になれよ」
「父さん!死なないで」
「ははっ、残念だな。お前の成長を・・・もう少し、傍で、見られたらな」