「おい、そろそろ放してやれよ」
そう声がして、カナの周りに集まっていた4人が離れた。その中の1人なんかは手を取っていたから、カナは思わずほっと息をついた。
「ごめんなー。あいつら人が好きだから知らない顔があると嬉しいんだよ」
「大丈夫、です」
「えっと、カナちゃんだっけ?俺はユーラ。ユーでいいから」
「は、はい。わたしもカナでいいです」
その返事が合図だったように、また彼らがカナを取り囲んだ。俺の名前は、と意気込んで言っている。
中学生くらいの4人は目をキラキラさせている。最初は苦笑していたカナも、彼らを可愛いと思うようになった。
カナが元の世界にいた頃は、カナの体があまりに弱いため、病室に同じ世代の子が入ることはなかったし、カナもベッドに寝てばかりだった。
友達が多いとはいえないカナだったから、こんなふうに囲まれるなんて初めてだった。最初はどうしていいか分からなかったが、しばらくすれば自然体でいればいいと分かった。楽しかった。
けれど初めてできた友達のことを思うと胸が痛くなった。
笑顔だったカナの表情が曇ったのを見て、ユーラがカナの頭に手を置いた。撫でるでもなくただ置かれた手は、大きくて温かかった。
「お頭たちなら絶対助け出すよ」
顔を上げたカナの目に映ったのは、自信に満ちたユーラたちだった。
***
先に2人を片付け、最後に巨漢を2人がかりで倒した。息の上がったニルバの肩を、同じく息の上がったタームが叩いた。
「よゆーだな」
タームが歩きだした。その後を追って今度はニルバがタームの背中を叩いた。
「余裕だ」
「でももう1人、あのでっかいのがいたら嫌だなあ」
「不吉なことを言うな」
ニルバが顔をしかめて言ったが、口調はそうでもない。むしろ来るなら来てみろという感じすらある。
「でかくはないが多いな」
先を歩いていたニルバが言った。アンの賊、20人ほどが廊下を埋めていた。
「余裕じゃあないな」
タームが苦笑いして呟く。上下する肩が落ち着くのを待たずに一斉に飛び掛かってきた。
「レミー!待ってろー!」
「レイっ、だっ」
飛び込んできた男の腕を取ってぐるりと曲げてタームが叫び、ニルバが足払いで将棋倒しさせながら訂正した。