「先生・・・それはつまり、過ごす場所によって生きる事の出来る時間が違うって事ですか?」
恭人は依然としてその瞳をまったく揺るがす事もなく淡々とした口調で尋ねる。
「うん・・恭人君の言うとおり、仮にこのまま病院で生活し続ければ最低でも・・半年は生きることが可能と言えるだろうね。でも、別の環境で暮らす場合は遅くても二ヶ月です。どちらを選択しても良いです。それを決めるのは私ではありませんから」
医師の問いにはすでに意味は無かった。
恭人の中では一つの『どちらを選択しても結局は死ぬ』という答えしかなかったからだ。
「恭人・・お前が選べばいい。父さんと母さんはまだ頭が混乱している・・・だが、これだけは言える。お前の人生はお前の物だ」
恭人の父、鏡涼(かがみりょう)が今まで恭人の背後で母親鏡茜(かがみあかね)を支えていたのが、もう大分安定したのであろう。
椅子に座る恭人の前に出た。
「俺は・・・」恭人の瞳が一瞬だけ揺らいだように見えた。